営業の達人への道

                          
        営業の仕事とは受注から始まり、売上し、そして入金まで。基本を越えた手法・考え方が必須。


応用編 9. 夜討ち朝駆け2

9.夜討ち朝駆け2  
 昭和62年11月下旬。もう随分昔になる話。T市図書館では新システム導入に向け検討も大詰めであった。館長より検討の取りまとめを任されたT係長は、システムの二社択一を迫られていた。しかし、図書館応接室では一切本音は出ない。必ず、営業マンとの話は他に誰かが付き、ディラーに偏った話は出来ない模様。民間会社でもそうだが、社員の誰が別のメーカー、ディラーにつながっているとも限らない。まして、官公庁だから特に逸脱した業者選定は出来ない。図書館システムは約45,000千円の物件。これに月額250千円の保守料が付く。金額は2社とも互角かという状態。システム性能も互角。サポート体制も互角。こうなると最後は、価格競争となる。ということで、第1回目の見積もりを提示。同時期に競合も見積もり提出。相手の金額は聞き出せない状態。安い方の金額で稟議が書かれる。書かれれば後戻りは出来ない。今日しかない。今日の夜、キーマンT係長の家まで夜討ちだ。メーカーNの新進営業マンとの協同営業だったが、夜討ちのシナリオ、住所の調査を午後3時ごろに詰める。住所がわからない。載っていないのか、T市に住んでいないのか。結局キーマンの部下のF主任経由で住所を聞き出すことになった。もうワンクッションの難関。こうして、時間を見計らって出撃。F主任が拒絶するとそこで敗戦。パスしてもT係長が心を開いてくれるかどうか。とにかく、取りたい一心でガムシャラにやっているが、内心大きな不安もよぎる。午後8時前後、F主任の家をキャッチ、飛び込む。訪問の主旨を話し、T係長の住所を教えてもらう。なんと隣のH市だった。その足で直ちにH市へ。着いたのが午後8時半頃。残念ながら、T係長は午後8時頃、食事を済まして飲みに出たとのこと。恐らく、11時頃まで帰っては来ないだろう。そう考えて、遅い夕食を取ることにした。季節は晩秋から冬になろうとしている時期。その日は夜になって風が吹き始めた。

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応用編 10. 夜討ち朝駆け3 

10.夜討ち朝駆け3  
 午後10時、再度T係長宅を訪問。当然、まだ帰宅していない。奥さんが丁寧に優しく接してくれる。ありがたい。多少の事情をご主人から聞いているのかも知れない。思うによく出来たご主人には、明るいユーモアの判る奥さんが多いものだ。さて、こうなると、戸外でT係長が帰ってくるのを待つしかない。玄関前の少し離れた道路脇の車で待機する。なんか刑事の張りこみのようで刑事の気持ちが察せられる。車窓には暗い竹林が風に揺れている。午後11時。「明日も仕事があるんだから遅くはならんだろう」とN社新進営業マンと話す。新進の時貴重な体験をしておくと後々ためになる。”刷り込み”が行われる訳 だ。まだ、帰ってこない。 まもなく午前12時前。その時坂道をゆっくり上がってくる人影がかすかに暗闇に見える。帰ってきた。家に帰るときは必ず待機する車の横を通ると計算していたが、なんと!!、10m手前の横の路地に入ってしまった。まもなく、玄関が開く。玄関灯が消える。二階の電気が点く。まもなく消える。就寝したんだ。今でも走馬灯のように浮かぶこの光景。今から訪問するかどうか。相手は相当酔っている。時間も極端に遅い。迷惑になると共に一歩間違えると破談だ。という判断に基き退散する。午前0時10分頃。今後どうする。明日朝しかない。出直そう。明日朝午前7時に再訪問だ。早すぎても迷惑。遅すぎると話す時間がなくなる。T市からH市の係長宅まで40分。逆算してホテルを午前6時発の計画を練る。その夜ホテルで寝たのは午前1時過ぎ。疲れなど忘れて熱い何かを感じたものだ。


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