営業の達人への道

       営業マンとして身につけておかねばならないマナー・行動、考え方の基本

入門編 29.土下座                       

29.土下座  
 人生、だいぶ生きてきたが、この土下座については、今のところ2回やったことがある。1回目は、次、捕まると累積点9点となり、60日停止を食らうという時で、交番内の若いおまわりさんに熱意を持って許してくれと土下座した。こちらとしては、本当に必死だったが許してもらえなかった。
 もう一回は、本題の営業の話で、ある時、オフィスコンピュータの保守料が長く滞っているユーザがいて、この保守料をなんとか土下座してでももらってこいとの上司の命令だった。この会社は、商工センター企業団地にあった家具卸業で、業績もいまひとつの会社だった。初夏の頃の暑い日だったが、一階事務所の受付で支払いを経理課長までお願いしたが、同室にいた専務までも聞いてもらえず、思い切って、その場で土下座をして実行した。この土下座、やったことも無い人たちにはわからないと思うが、人間のメンツというものが崩れていくのが実感できる。土ベタの砂のでこぼこを手に感じたのをうっすら覚えている。
  ひれ伏してしまえば、今度は立ち上がれなくなって、何かの立ち上がるきっかけが欲しい。 そうして「何とかお願いします」とひれ伏していると、経理課長が、我が社まで電話を入れ、「土下座されて困っている」と連絡、ちょうど命令した上司が電話を取って、「もういいから帰って来い」ということになった。土下座から立ち上がって、やれやれとホッとしたが、この上司、命令しておいてもういいからとは何事か。一言「支払いの件よろしく」とは言えなかったのかと思ったものだ。こうした努力にかかわらず、それからも、保守料はもらえず、時間がたち、この会社は、整理寸前までいってつぶれ掛けてしまった。
 この土下座事件の後、営業担当なもんで、時々、この会社の訪問を行っていたが、それ以後、社長までも、愛想がよくなって、なにかと話しかけてきたりされた。おそらく土下座の報告が上がり逆に好印象となったのだろう。
 先ほどの経理課長は、その後何年もして、この会社を退職、老人介護施設に転職したが、それがわかったのは、その施設をたまたま訪れた時、大きな声で我が名を呼んでもらったからだった。 
 土下座、めったにする者がいないだけに、それなりの感動は与える。もっとも、やり手に熱意がないと、見透かされ白けたものになり、逆効果ともなりかねない。




入門編 30.貴重な体験(1)

30.貴重な体験(1)
 何年も営業をしていると、当然いろんな業界を訪問することになる。
広島市の南方、呉市もよく営業活動を行ったところだ。営業マンは、出来れば自分で培った知識、体験、ノウハウが活かせればこれに越したことは無い。
 呉市にあるこの会社は、冠婚葬祭業で、当方としては、すでに県東部でこのシステム
の受注実績があった。ということで、鋭意努力して、受注活動に励んでいた。ただ、この会社、その当時、ビル一階が駐車場となっており、これが、いつもギシギシに詰まっているのだった。その日訪問した時、幸いに、奥に詰めれるスペースがあり、気持ちよく中に駐車出来た。
 そうして1時間ぐらいの商談を終えて、一階の駐車場まで降りてみると、わが車の後ろに一台、幌をかけたトラックが留まっているではないか。車を出すためにはつかえたトラックをバックして移動するしかない。幸いキーが付いていて、エンジン始動、バックしようと後ろを振り向き荷台を見たところ、なんと、それは白木の棺おけが積まれていた。バックするにしても、両サイド狭いものだから、ほかの車に当てないように、ゆっくりと。何回も何回も後を見ながら。この時、一瞬びっくりしたのと、その後、やれやれという気持ちと、その後は、営業という仕事は、こんなこともなりなんだと、思わず苦笑してしまった。
 この体験後、もう何十年も時が経過しているけれど、今は、それなりに愉しい思い出に代わっている。なお、この受注活動の結果は・・・おかげ様で、お仕事いただきました。
  営業はドラマだ。この会社での次なる体験が(2〜)となります。

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