”☆☆介護保険四十五言☆☆”



深い川底に沈んだ人間を助ける生物などはいない
うわべばかり見ている看視人が助けるわけがない
大地(川底)は黙っていてもワシを救ってくれた
生きていて「有り難かったのか悪かったのか」
大地に感謝しながら日暮のじいさんに聴いてみた。



おーい、ばあさんやまだ起きとるんか
うるさいねぇ、まだばあさんじゃないよ
「おーい隣のばあさん」うちのじいさんが呼んでいるよ
役立ちもしないしかも強制的に送ってくる老人手帳なんかまだ送って来ていないよ
わたしゃあ、まだ五十代じゃけえねぇ
三本のビールを飲んだらエエかげんにして寝んさいよ
だらたら飲んどるけえホラみんさい、シーズー犬のコロはじいさんが二本飲んだら
ハイ叩きを持ったじいさんの手の届く範囲から逃げとるでしょうがぁ
わたしゃあ、黙ってじいさんの傍におり毎日同じ話を繰り返すのを
耐えて聞いてるんじゃけぇ

まあ、ワシの言うことを聴いてみいやぁ
ワシが底無し海で泳げるようになったり
、思いやりのある人間になった分けを

はったり言いさんなぁ「底なし海があるもんかい」

そうじゃないよプールと比較したらのことよ

それでどうしたんねぇ

喧嘩ごしにならんでも「まあ聴いてみいや」ばあさんや



ふーん、あんた小学校時代に川底に沈み一回死んだ人間なんだ
それで人より少し優しいと思ったよ



そうよ、話せば長くなるが聴いてくれやぁ
太田川は昔、七本の川に分かれておってのう
その一つの中の猿候川はワシが住んでいた一番近い川だった
12時間ごとにおとずれる干潮は、たった五メートルの川幅に変身さし
しかも幻の運動場をつくり、その砂浜に子供が集まり、よう遊んだもんよ
満潮になれば砂浜もかくれ川幅は四十メートルになり不思議な川じゃった

満潮になると遊び場が消えるので、行き場のなくなったワシは
仕方なく家事の手伝いで山に登り
五右衛門風呂を沸かすための焚き木や落ち葉を一杯拾い
スミ俵につめこみ、小学校の二ノ宮金次郎の銅像を真似をして
赤銅鈴の助の漫画を読みながら
自慢顔で急斜面を走って家に帰ったもんよ

ここで本題よ
満潮になれば泳ぎの達者な連中達の川渡りがおおはやりで
向こう岸に渡った奴等はみんな握りこぶしの手を上げて
奇声をあげながら、オーイ早よう来いやぁ

そりゃあないよ、満潮の川幅は四十メートルなのに
「もぐり専門のワシが渡る前に溺れて死んでしまうわい」
人を馬鹿にして

そのうち潮がひいて五メートルぐらいの川幅になった
ヨシこれなら渡れるぞ、横断するぞ
目を閉じて向こう岸をめがけてもぐった
硬いものが手にあたって強烈に痛かった
向こう岸の岩にあたったのだ。よし着いたぞ
岩によじ登り「ワシも川を渡ったぞ」
たいしたもんじゃ。独りで喜びに酔いしれて時が過ぎた
気がついたときには、砂浜が見えなくなっていた



泳いで渡ったのじゃけ泳いで帰らにゃあ
橋を渡って帰ればええのに
意地ぱりのワシが川に飛び込んだのが悲劇の始まりだった
いくら泳いでも急流に流され岸にたどり着くどころか
潜水艦のように川底に沈む
水中では呼吸もできず、とうとう力尽きて川の底にしずんだ

両足が川底についた。息苦しくなったワシは「このまま死ぬのか」
観念したが不思議に意識はしっかりしていた。
どうせ死ぬのなら「もう一度娑婆をみたい」フッと上を見ると明るかった
吐きだす息はシャボン玉のように急いで水面に向って行く
ヨシ、あの水面まで浮けばなんとかなるんじゃないか
川底を足で力いっぱい蹴った。体が宙に浮くように水面ぎりぎりまで浮いた
少し息ができたが、また沈んだ。

くそう力がある限り川底を何回も蹴ったる
水面まで浮いたら息ができることを知った
繰り返しているうちに背丈のとどく水位の高さになった
つま先だちしたら常時息ができるようになった
急いで岸に登った

泳げなくても川底を蹴れば体が水面まで浮き
息が出来ることを知ったワシは泳げんでも川が怖くなくなった



それ以来、手を動かすと前に進み、足を使うと速くなる。
まるでイルカのような体になった
石をもたんと沈むことができなくなったワシの体は
もぐり競争では大きな石をもって川底をけって走るので
人には負けることはなかった

生きたい一身が「生きるコツ」を無意識に覚えたのだろう
落ちるところまで落ちたらそれ以上落ちることはない
人生も同じで底なし沼はなく、きっと助ける人が底にいる
幼いながら、金では絶対かえない生きる秘訣を経験したワシは
困った人を助ける精神が芽生えたような気がした
河童の神様が助けてくれたんかのう



行きはよいよい帰りは怖い
川底を冷静に観察してみるといままでと違う世界を目撃した
フナやイダ、どんこ、白魚、ハヤなど優雅に泳いでいる
石の奥にはうなぎがこちらを睨んでいる。こいつ生意気な
うなぎを掴んだがズルッとして手から逃げた。
ワシの手は優しいんじゃろう
水面には川じゃなのに海魚のサヨリが泳いでいた

しょせん私の独りごとよ



カワラノギク




2004年11月18日の日本経済新聞に介護福祉施設の食住費徴収開始と掲載されたが
介護保険料を上げると言うとるし施設からも取られるようになるらしいが
ワシでもわかるように説明してくれや


ころころ変化するけぇのう、なにがはじまるかわからんよ
特別養護老人ホームなどの施設入居者の食費は材料費だけで、
居住費は今まではいらんかったが制度の見直しで
食住費徴収は2006年4月から実施することに決めたが
2005年10月から徴収し期日を前倒しにしたのよ

なんで前倒しするのやぁ、介護保険が設立したときは施設入居者の食費と居住費の徴収
など国民に約束しておらんかったぞ、年をとると年金収入が増えるわけでもないし
医療費はあがるし、介護保険料も上がるし、納得できんのう


施設利用者と在宅利用者の格差をなくす為だと説明しとるがのう
介護保険の利用者が増え続け介護保険財政が圧迫され、これ以上悪化すれば
県市町村の破綻を招くようになるけえよ

そりゃあいけんのう、ワシのために国が破綻してもろうたら困るけえ
もし食費と居住費を払うとしたら一ヶ月なんぼう払ったらええんや


低所得者は徴収を免除するが、四人部屋など標準的な利用者は一人当たり月
三万円強の負担になるらしいよ
今、施設を利用しているばあちゃんは要介護3で国保連から
施設に支払われる約31万のうち

     ★1割負担の約3万円
     ★食材費が1日780円で一ヶ月2万3千円
     ★介護保険料を3000円は年金から天引きされ

全部で約六万円ぐらい払っとるらしいがのう

よう分からんのう明細はどうでもエエけぇ
制度かわったら全部でなんぼうになるんや


簡単なことよ
施設によって異なるがのう、現在、一ヶ月六万円ぐらいはらっとるけぇ
新たな制度が一ヶ月三万円ぐらいの負担増で、足して九万円ぐらいになろうてぇ

たこうなるのう、なんでそうなるんやぁ


知らんよ、医療と福祉の介護を一緒にまぜたけえのう
介護保険制度はすべて出来高払いみたいなもんじゃけぇ
利用収入が減ったら事業所は倒産するけぇのう、介護保険を必死使うようになるヨ
今におおごとになるよ。施設利用者が増え在宅が空になろうてぇ

時代の流れか知らんが、昭和五十年の頃は措置費制度の時代で
施設入所者は65歳以上で介護者がいなく在宅生活が困難な人を
福祉事務所が入所者を決めており、利用料はいらんかったけぇのう
それに、あの時代は市町村から長寿の祝い金までもらって
利用者は「お上に足を向けて寝たらバチがあたる」と言っていたがのう

その頃はどういう制度やったんや、ただなら、みんな喜んだろうのう
しかし、独り暮らししていた人がいきなり集団生活には計り知れない
「苦痛じゃったらしい」と聞いたが


ほうよ、ただより安いものはないと喜んで入所を決心したが
いざ明日入所することが決まったとき
最後の家族団らんで自分が建てた家に未練を残しながら
別れを惜しみ悲しい盃を交わしていたら庭先が明るくなってきた
障子を開けると雪がしんしんと降っていた
最期の灯火じゃあろうてぇ
ワシがおれば家族の崩壊じゃ、これ以上迷惑をかけることはできない
脳梗塞後遺症で歩行不可能になった体にむちをうち
やるせない気持ちで入所した人が多かったらしいよ

入所者の中には年を追うごとに、使うことがないお金が貯まり
預金が増え続けたらしいよ
「一部でもエエけぇ国が施設に支払う措置費を払いたい」と言う人がでてきたらしいよ
在宅ではのう、買いたい物があればすぐに買いに行ける「生きた金」じゃが
施設では「死んだ金よ」
隣のベットの寝たきり老人がひとりごと言っていたよ

そんな肩身の狭い思いをするぐらいなら措置費を払ったらよかったんじゃあないか
入所者が言っているように「死んだ金が、生きた金」になるんじゃあないか


お前が言うように昭和五十五年から措置費の全額負担から無料までの
費用負担制度ができたのよ。
収入の高い人は全額、ない人は無料で困った人を助ける制度が出来
これは好評で二十万円払う人、千円払う人、色々なランクが決められ
一部負担することで、遠慮なく施設利用が出来るので利用者は喜んだらしいヨ

なんでその制度を続けんかったんや


それよ、いきあたりばったりの政治の責任よ。
「頼まれたらしょうがない」「なんとかしましょう」の精神よ
日本の将来を考える人物がいなかったんよ
なさけのぅてやれんよ。医療費がタリンと言って
医院のベット数の縮小をはかるために考えたのかしらんが
完全看護と理由をつけて、付き添いの家政婦を違法と位置ずけ排除したのはエエが
不足している看護師は夜勤まで手がまわらず、やむえなく
運営ができず廃業する医院や病院が増え、こりやぁ大変だ
「減らされたベットを何か利用できないか」工夫したのが介護保険のケアサービスよ

なんでや
医療は治療と介護が一緒であるという考え方が間違いと判断したんか
介護も医療の大事な一部分に含むと思うがのう
心なくして病気が治るもんかい
病気は気の病と昔から言うけえ、何を勘違いしたんか


しらんよ
結局、得意なその場しのぎ政策が医療保険の抑制のためにできたのが介護保険じゃけえ

しょうがないのう、もう手遅れじゃが「後払い制度」ができとったらのう

独りで宇宙に旅立つとき、金を持っていけるわけでもないし土地も持っていけんし
勿論名誉や地位位も持っていけんし、何もかも持っていけんのじゃけぇ

今とられたら寂しくなるけぇ、財産を精算する時がきたら
国が払っている措置費の全額は無理としてもできるかぎり支払う制度にして、
残ったら家族で遺産相続すればエエ
いやならあたりまえのことじゃがちゃんと親の面倒を在宅でみればエエ


お前が言うように
介護保険制度ができる前に「後払い制度」があったらよかったのう
証拠残すためにむつかしい無駄な書類を書いたり、人間性に欠けた
資格持ち主の介護を受けたりせんでもよかったのにのう

老後は屁理屈よりも単純にお世話をしてもらいたいもんよ
生きとるうちに人に役立ち、家族との喜びの笑顔をみにゃ損よ
それが生きがいよ

クローバー     椿


今問題になっている介護保険だけじゃあないぜ
ペイオフも来年から実施されるしのう
銀行も情けないのう。利息もようつけんようになったし
少子高齢社会になるのは年金制度が発足した時からわかっていたが
人が減れば

             ★ 税金もはいらんし
   ★ 学校もようけぇいらんし
   ★ 住宅もようけぇいらんし
 ★ 道路も四車線はいらんし
   ★ 高速道路もいらんし
   ★ そのうち過疎化が進むじゃろうし
        ★ 町は廃墟となるじゃろうのう

        ★ JRの官舎や大手企業の社宅をみたらようわかるよ


しかし、七千万ぐらいの人口が適切だと言う人もおるよのう
日本の人口が七千万になったときの社会像を考えて
どんな日本につくるか
具体的な政策を、だれも言わんよのう

ワシは戦争の怖さをじいちゃんから聞いとるが
今のワカイもんは人生対等と思っておるけえ
チャントと方向をさだめてやらんとおおごとになるぞ
ゲーム感覚で宇宙戦争が仕組まれる気がするが

広島では「二度と戦争の悲劇を繰り返さしてはいけない」と誓って
鶴を「千羽を折ればきっと治る」と信じ
体をむしばむ原爆後遺症である白血病に苦しみながら
毎日折りつづける佐々木貞子をみて
全国の国民が激励して「平和を誓い」鶴を祈り続けた。

チャントせんかい
人生の設計は老後をよう考えんと
じいちゃんが言いよった。今日無事に生きることができたのは
日暮の感謝の気持ちがあるからでき、そして、明日がある


                        ◎よい種をまけば良いものができ
◎悪い種をまけば悪いものができる
◎自然と共存して自然の力をしらんと
◎資格制度が人間性を失っている
◎優しさがすべて介護の基本よ

∵∵∵∵∵∵ようばあちゃんが言いよった∵∵∵∵∵∵

∵∵∵∵∵∵人に迷惑かけずに家族が食べれるだけでエエ∵∵∵∵∵∵

∵∵∵∵∵∵少しでも時間があれば困った人をささえればエエ∵∵∵∵∵∵

∵∵∵∵∵∵少しでも時間があれば悩んでいる人がいれば耳をかしてやればエエ∵∵∵∵∵∵

∵∵∵∵∵∵少しでも時間があれば人が嫌がる仕事を進んですればエエ∵∵∵∵∵∵

∵∵∵∵∵∵少しでも時間があれば楽になるような知恵をだせばエエ∵∵∵∵∵∵

∵∵∵∵∵∵少しでも時間があれば楽しく生きる努力すればエエ∵∵∵∵∵∵

∵∵∵∵∵∵ほいじゃが、人にうしろ指をさされような人間になるなよ∵∵∵∵∵∵

∵∵∵∵∵∵ほいじゃが、金の貸し借りはするなよ∵∵∵∵∵∵

∵∵∵∵∵∵ほいじゃが、連帯保証人には絶対なるなよ∵∵∵∵∵∵

∵∵∵∵∵∵ほいじゃが、そうは言っても断ることもできんしのう∵∵∵∵∵∵

∵∵∵∵∵∵ほいじゃが、その時は心を鬼にするしかなかろうてえ∵∵∵∵∵∵

∵∵∵∵∵∵ほいじゃが、高齢者であっても弱い高齢者の手足となって、動かんとのう∵∵∵∵∵∵

∵∵∵∵∵∵ほいじゃが 年金を十分もらい社会のために生きたいものよ∵∵∵∵∵∵

 人の心の痛みや苦痛を感じるぐらいにならないと成長せんよ      

通りゃんせ 通りゃんせ
ここはどこの 細通じゃ
天神さまの 細道じゃ
ちっと通して 下しゃんせ
御用のないもの 通しゃせぬ
この子の七つの お祝いに
お札を納めに まいります
行きはよいよい 帰りはこわい
こわいながらも
通りゃんせ 通りゃんせ

おかしなことよのう

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