”☆☆介護保険に二十二言☆☆”


氷点下ー45度の寒気団が居座り、寒いさむい日々が続いていた真冬の話である。腰が九の字に曲がり膝に手をつきながら歩くお婆さんと灰色の髪と髭が伸び放題で右手に竹の杖を握りしめ膝をガクガクしながら今にも転倒しそうな危なかしい足取りで歩くおじいさんがいた。二人とも共通して目玉だけがギョロとしていて、風呂にも入っていない様子で体は臭く痩せこけた仙人のようなA老夫婦はなんとか生きながらえている、その日暮らしの生活であった。
雪の降りそうなある日、夜8時頃

♪♪♪チャララァーララ〜チャララァーララァー♪♪♪

リヤカーでチャルメラを吹いて夜鳴きそば屋がやって来た。Bさんのおやじが「今日は底冷えするけぇラーメンでも食べようかぁ。」と言ったので、早速寒中に赤チョウチンをめがけ飛んで行った。「ラーメン3丁頂戴」と嬉しげに注文する。Bさんのおふくろは買ってきた三つのラーメンを七つのどんぶりにわけた。コショウをいっぱいふりかけてフウフウと吹きながら皆で飲んだ熱い汁はうまかった。

「さあ、風呂に入って寝んさい」おふくろに言われた三男は、廻りの鉄が熱く勿論底のほうが熱いのでおそるおそるスゲタに乗りヤケドしないように五右衛門風呂に入った頃、大きなボタン雪が降り始めだしその後粉雪に変わった時、裏庭でゴソゴソする音が聞こえ一瞬泥棒が来たと思ったが、温まった体に寒い思いをさせたくなかったので頭からフトンをにかぶって寝てしもうたら、朝起きてみたら雪は30センチも積もっていた。
当番の三男が掘りゴタツに炭を入れようとしたら、「さあ大変、」炭俵がないじゃあないか、少年探偵団ごっこの気分になり「犯人は誰だ。」犯人をさがそうと現場検証をする。犯人捜しはいとも簡単であった。雪が積もっていたので炭俵をひこじった跡がつきそれをたどって行くと気持ちの悪い幽霊が出そうなぼろ小屋にたどりついたのだ。「よしゃ見つけた」有頂天になり犯人を見つけたヨ、じいちゃん。
「やっつけに行こう」と言ったら、

「罪は憎んでも人は憎んではいけない」

大きな声で叱られた。「廊下を見てみいミカン1個と米一合がおいてあるじゃろうがぁ、よっぽど寒かったんじゃろう。アリが大きな石を運ぶのを真似して炭俵をかかえて持ち帰ろうとしたA老夫婦が栄養失調で虚弱な体であり、とうとう力尽き仕方なくひこじったんだろう。割はあわんが物々交換よ。」
「困った人を助けるのが人の道だ」「人間は心で生きるのよ、心と心は何も言わんでも目に見えない透明な糸でしっかりとつながっているんじゃ。」
じいちゃんに説教されたよ。



和歌山で大変な事件がおきたのう
誰も起きると思っていたと思うヨ、自宅という密室でしかも一人暮らしじゃけぇ
こんな事件を防ぐために成年後見人制度をつくったんじゃが
分かり易く説明しとらんし、誰でも簡単に利用できるように作らんけぇヨ
国民は誰もそんな制度があることさえ知りゃあせんヨ
福祉の精神でできないものを市場競争原理だと訴え、
介護が商品のように取り扱われるからヨ
社会全体でささえるように位置づけされた介護保険と言いながらも
実際は地域の人が参加していないし、民生委員の顔も姿もないのがおかしいヨ
いままで地域を必死に親身になって困った人のお世話をしてきた
民生委員を中心とした地域密着型介護保険制度にせずに
民生委員をカヤの外に位置づけたけぇ
おこるべくして事件が発生したんよのう。

調査やケアプランを出来高払いにしケアマネージャーのみに押し付け
意思の通じにくいお年寄りや痴呆性老人の対応は一人じゃあ何もできんヨ
なんらかの形で長年住んでいる民生委員がかかわって
民生委員とケアマネージャー二人三脚でせにゃあ
家庭内に入っていけんよ

朝・昼・晩の食事は欠かせんけぇのう、近所の助けがあれば楽じゃろうがのう
近所の元気な年寄りもヘルパーの資格をとり報酬を得ることができれば
お金を払い又もらいボランテイアという言葉にまどわされない社会は
お互いに遠慮がいらんけぇええと思うが、お前はどう思うやぁ
顔なじみで大体のことは分かっておるけぇ悪い事はしゃあせんよ
近所同士で助け合いその中に民生委員がおり
それらの援助をケアマネージャーがすればのう。
こぢんまりした制約のない気楽な制度がええのう

人間が生きていることを知らんのと違うか
スイッチを切って生きることができると思っとるんじゃないか
介護は一秒たりも息が抜けれんことを、よう知っとるんかのう
元気なもんは分からんじゃろうが失敗して反省し、明日につながることを考えにゃあ
しかし反対に未経験で月に行ったもんはたいしたもんじゃのう

じいちゃんがよう言いよった。呼吸するのに考えてするか?
歩くとき左足をだしたら次は右足をだせ、と考えて歩くか?
それを意識したらなにもできんじゃろうが
自然にまかせて、正直に生きたら苦しいことはないヨ
しかし、人間は欲の塊じゃけんのう
自然の川を見てみいいやぁ、
高いところから低いところに水が流れ弱い土にぶつかったら、
そこをぶちぬいていくが硬い土にぶつかったら横に曲がって流れていく
そうしている間に緩やかな勾配になり無理のない穏やかな川に変身し
流れながれていくうちに清流となり
土砂がたまって自然に広島市の三角州が出来たんヨ
ほっとっても自然に、ほたるやカワニナやフナやハヤが
安心して生きる環境が造られるんよう
自然の法則にさからうから、いつまでたっても金がかかり被害が大きくなるヨ

もう少ししたらホタルが舞うのう
小規模の河川工事が終わったけえ、今年こそ見たいのう

♪♪あっちの水はかあらいどこっちの水はああまいどホウほうホータルこい♪♪
懐かしいのう

ほたるの明かりで勉強した人もおったらしいのう
ほたるのように明かりをつけて飛んでみたかったのう
川底を見たらやっぱりコンクリートだった。駄目じゃのう
ほたるがもう一度見たいもんじゃのう
テレビをみていたら患者本位に考えている
看護婦さんがいるのにはびっくりしたのう
がんばらにゃ

おかしなことよのう

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