仲のよいおしどり夫婦がいた。亭主は戦時中、牛田と白島を結ぶ吊り橋の工兵橋を作った人だった。
剣道3段で写真もプロ級であった。料理も得意であった。女房は華道の先生で定年後夫婦
みずいらずの余生を楽しんでいた。だんだんと女房の体に異変がおきてきた。入院を勧めるが
「一つしかない命だからもう少し主人のそばに居ってあげたいから」しかし、願いもむなしく
余儀なく最後の治療方法である輸血をすることになる。
その日暮らしの生活環境であったが、亭主は愚痴一ついわず看病をつづけた
がとうとう女房は寝たっきりになった。
女房の病名は原爆後遺症の白血病であった
日々がたつにつれて食事も喉を通らなくなり、輸血をしながら「こんな体でも一刻でも長生きをしたい。おかしいでしょう、
主人は他人と一緒に共同生活が嫌いなので、」と
切実に訴えるのだ。青白い顔をした女房の顔は骨に皮がついただけで、四肢も触っただけで折れそうで
まるでミイラと勘違いするように全身が痩せこけている。
「最後のお願いです。私が死んでもできるだけひとりにしておいてやってください。
共同生活がいやなのです」在宅で夫婦二人きりで生活したいのだ。
こんにちは
今日は気分が悪いから帰ってください。訪問入浴にきたが、つれない言葉だった。
体調が悪いのだから入浴ができないのは当たり前だが、30分かかって来ても
時間給のSさんには日当がないのである。
一週間後今日は利用してもらえるだろうと思って20分前に着き約束の時間がきたので、
「おはようございます」元気な声で玄関のドアをあけると、「おばあちゃんは昨日の晩に入院しました」と言われた。
事業所から何日の何時に行くように命令され利用者の都合によってキャンセル され、当然今日の収入もゼロである。
「利用者が必要ないときは仕事がないのが当たり前よ」と言っているが、 リストラされてこの仕事なら社会に役立つし、これなら大丈夫と思ってヘルパーになったのに介護保険制度が生活不安の要因 になるとは、もうチョット考えて世間並みの待遇の給付額にすればいいのに、子供達は腹が減って母親が帰ってくるのを待っているのに 、こんなことでは塾どころか学校にも行かすこともできず、自立した生活ができるもんかい。
おじいさんがいつも言ってたよ。
人は、まず自然との会話ができないと駄目だと。
人質にされた盆栽が、今なんの会話を求めているのか
働き盛りで飯がほしいのか
のどが渇いて水が欲しいのか
虫がついて痒いのか
根がふえて生き苦しいのか
「こんな会話ができないものが自然に勝てるわけがない」
とうとう枯れたらしいよ
おかしなことよのう