動物病院   
 ワンタが病気になったとき、運悪く年末、お正月の時期で、いざワンタを病院に連れて行こうと思っても、すでに病院は休みに入っていた。行きつけの、少し口調が荒いA動物病院も休み。このため、ネットや電話帳で電話をかけ、一日でも早く診療してもらえる病院を捜した。そうして、お正月2日の午前中が空いている近くの病院を見つけ、当日、早速ワンタを抱えて飛び込んだ。最近は動物病院もたくさん出来ていて、ペットブームの世相を反映している。病院ではそれなりの治療をして、今度は4日に行きつけの病院連れて行った。この病院は、腕はしっかりしているのだろうが、何か粗っぽい。飼い主の辛い気持も事務的に処理する。点滴を1時間ほど受けたが、ワンタが横たわる診察台はステンレスの冷たい金属そのものだった。点滴を受けている間にいろいろ動物病院について考えた。そういえば、ここの病院を、最初から、ワンタは嫌っていた。診察を受ける時に、凶暴になって噛みつこうとする。めったに行く病院でもないので、大して気にもとめなかったが、何か、犬としては、感じていたのだろう。その点、2日に言った病院は優しかった。点滴を受けたとき、冷たい診察台には、バスタオルが敷いてあった。ワンタも大変大人しく治療を受けた。
 動物が病気になったり、怪我をした時、人間は自分本位の都合のよい病院を選んではいないか。物言わぬ動物たち、本当は、治療のほかに何かを感じて逆にストレスを感じているかもしれない。動物の気に入った病院を選んであげたいものだ。そう思いながら、点滴が落ちていくのを眺めていた。




 雛人形    
 ワンタは、家の中で飼われていて興味のあるものには噛んで確かめる?癖があつた。特に、家族が触ったものとか、匂いのするものは何故か噛んでみたい心境になるのだと思う。 そのワンタが、決して噛み付きもせず、歯型を残さず、一目置いていたのが、3月に飾る雛人形だった。我が家は、子供が娘2人なので、長女が誕生した時、爺ちゃん、ばあちゃんから、6段の大きな雛人形を買ってもらっていた。大体毎年、時期が来るとその雛人形を飾っているのだけど、この雛人形のセットには決してワンタは近づこうとはしなかった。雛壇の前を通る時は、何かよそよそしく遠慮げに通ったものだ。これまた、家族でこのことが話題になって、いろいろ意見が出たけれど、結論は出なかった。雛人形たちが一斉に雛壇から前を見ている風情は、恐らく、ワンタからするとミステリーだったのかも知れない。 おかげで、この雛人形たちは、全くワンタからの噛み付き被害にもあわず、元気に押し入れにしまわれています。

シッポ
 何か臭うぞとワンタのほうを振り向くと、ワンタは何もないぞというような顔をしてこっちを見ているのだった。電気ストーブにワンタのシッポが当たっている。臭いはシッポが焦げて出た臭いだった。こういうことが、ストーブを出す冬になると何回か起こった。本人は別段なーんにも思っていない。平然としてストーブに当たっている。「ワンタ、熱くないんかい」とワンタに注意するけど全くわかっていない。そのうち、本人の太い茶色の毛のふさふさしている一部が焦げて、毛が薄くなって不細工になっているのだった。そういう格好で家の中をフラっとやって来て寝そべるものだから、家族の皆んなから笑われ、馬鹿にされているのだった。

 
  手の届かないギリギリの所に陣取る。
  しょつちゅう触られたくないんだネ。





クマ太郎               
 通りのななめ前の家に住むクマ太郎は通称クマと呼ばれている。通りをワンタが散歩で通る時、必ず吠えていた犬でワンタより1年若い。ワンタが亡くなる前に通った時は、ジッとやせ細ったワンタを見たまま、全然吠えなかった。後から家族で犬でも状況が判るから吠えないんかねという話題になった。
 ワンタが亡くなって2ヶ月くらいたった雪の降った次の日。3月24日、午前9時頃。我が家の庭で何やら動くものがいる。「亡くなったワンタがいる」と思ってよく見るとなんとクマだった。庭に入ってきてウロウロしている。クマ、クマと台所のドアの所で呼ぶと裏にいた クマはやってきた。「ワンタの墓参りに来てくれたん」といいながら頭をさすってやるとじっとしている。中に入りたそうでもある。今までクマがうちの家の庭に入ってくることはなかった。ワンタが気になって心配で見にきたのかなとも思う。普段、クマは庭で飼われていて外には出られないはずなのに、また、出られたとしても何故、入りにくい我が家の庭に来るのか、不思議だねーとクマが去って行った後で話し合った 。
 動物は動物どうし、きっと何かつながるものがあって、やはり何も喋りはしないけど、お互い気になっているのだろうか。見舞いに来てくれた野良ネコのこととか考えて、魂のあるもの、皆んなおんなじだなーとおもわざるを得ない。 こんなことがあって、また、ワンタを思い出してしまったけど、それからしばらくして、クマ太郎に感謝を込めて美味そうな焼き鳥を届けてやりました。


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クマ太郎もさすが地中にワンタがいるとは気がつかなかった・・・