雪の日に散歩から帰ってくるとワンタの手足の裏はきれいなピンク色をしていた・・・
肉球
犬の手足の地面につく所を肉球というそうだ。人間であれば手の平、足の裏という所だ。肉球といういい方は何か面白い。確かに、棒のような手足の先にちょことついているものだから、どちらかといえば、球に近い。時々ワンタを抱き寄せて、ひざの上に座らせて、手足の先の肉球のころころ可愛らしいのをもんでやると、じっとしている。その先には爪が伸びて、よく散歩をするものだから、その先は磨り減ってまあるくなっている。犬の肉球は大体履物を履かずに外を歩いたり走ったりするものだから、黒く汚れている。玄関から上に上げる時、濡れた雑巾で拭いてやるのだけど、きれいには落ちていない。その黒く汚れた肉球が、年に何回か、きれいに、かすかにピンク色になることがある。それは、雪が積もった日の散歩の後だ。 ワンタは、雪の積もった日の散歩が大好きだった。雪が20センチほど積もった公園をピョンピョン元気よく走り回って
白い息をしている光景を今でも思い出す。散歩から帰って、玄関で体や手足を拭いてやる。 そうして、肉球を乾いたタオルで拭いてやると、本当に汚れが取れてきれいなピンク色になっていた。そして、冷たい雪の中で遊んだものだから、肉球が冷たく冷え切っているのだった。そんな時、手の平で包んで、ハァハァ温かい息をかけて、手足の肉球をしばらく暖めてやったものだ。
キップ
何故か、ワンタは猫族に大変興味を持っていた。散歩に出てて、ネコが車の下にでもいれば、その場を離れない。じっと車の下に頭を突っ込み、ネコの出方をうががう。 その内、ネコが本気で怒りだし、威嚇に入ると、ワンタは、状況判断して、静かにその場を離れようとする。その状況をジッと観察するのは面白い。右の前足が地に着きそうで、着いていない。ワン太にとって、この時の状況が微妙なのがわかる。ここで、我が保護者としては、小石を拾って、ネコが襲ってこないよう、ネコに投げつける。人間が加勢するんじゃ勝てんとばかりネコは逃げ出す。大体、散歩に出かけるとこの様なパターンが多い。
ある時、ピーンと何時も立っててかっこいいワンタの左側の耳の先が丁度、昔の国鉄キップをハサミでで切られたように端が切り裂かれているの見て子供に聞いてみると、ネコの爪で引っ掛けられたとのこと。もう血は出ていなかったが、ほんの少し切り裂かれている。大体、犬に比べて、ネコは気性が荒く、敏捷性もある。大方、しつこくネコに付きまとっててネコの爪でヒョイとやられたのだろう。こんな事があった後も、これまた懲りずに、相変わらずネコを追いかけているワンタ。 いいかげんにせえよと同じパターンで散歩する。
ワンタは、時々寝ている時、何か夢を見ている。見ながら、手足が動いたり、小さな声で、「ワン」とか言っている。「ワン太が夢見とるでー」と聞くと「おおかた、また、ネコにでも追いかけられて逃げている夢でも見ているんだろう」と冷めた返事が返ってきた。その間もワン太は「ワンワン」と小さく叫びながら、夢の中でネコから逃げ回っているのだった。


ワンタ物語のトップページにもどる



4