●いたずら大好き
 ワンタはいたずら好きだった。履いているスリッパを脱いで座敷に上がるや否やサッとやって来て、片方のスリッパをくわえて逃げる。こらーと追いかけるとますます逃げる。放っておけば、振り回して飛ばしたり、食いちぎろうとする。本気で怒っていると判ると口からポトンと離す。お陰でスリッパはどれもボロボロ、ズタズタ。そんなスリッパを皆んな平然と履いていた。本なんかも同じ。新しい本を買ってきて、ちょっとどこかに置きっぱなしにしておくと、これまた犠牲にあった。表紙が食いちぎられているー。こんな時は、可愛さを通り越してバシっとやったもんだ。
THE MEMORIES OF WILD WANTA
   ●しゃべれないワンタ
 世の中の犬たちがそうであるように、ワンタも人間のように言葉がしゃべれない。だから、その時その時の状況を目で見て、肌で感じて言葉を理解しょうとする。判らない言葉や状況が理解出来ない時は、じっとこちらの目を見て小さな頭脳で考える。その時のしぐさがまた可愛い。到底理解できない、やらかしてしまった失敗への文句・説教など判るはずもない。でも何を言っているのか目が理解しょうとしている。感情で表せば、当然その動きはシンプルになるところから理解は早いのだが。 時々ワンタも言葉がしゃべれたらなとワンタに言う。でもベラベラしゃべられたら家の中はやかましくなるぞとも思う。 
  病気で最期を迎えた時も何もしゃべらなかった。死を直前にして、ただ寝そべって痩せ細っていくだけだった。人間のようにどこが痛い、ここが苦しいということもない。ただ、静かに死を待っている。そういうワンタの姿を見ていると死を悟っているような何か崇高な、また威厳のようなものを感じる。随分ワンタには癒されたけど、また、最後には生き物の自然の摂理というべきか大きな度量のようなものを教えられ、驚かされた。




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    ●出迎え
 飲んで深夜に帰宅した時もワンタは、眠いのだろうフラフラしながら、必ず出迎えに来た。足音を覚えているのか、まったく吠えもせず、玄関の戸が開くのを待って、この時は、軽くシツポを振って、顔の鼻・口元のあたりをお帰りとばかり何回か舐めて、スタスタまた寝床に戻って行く。なんと律儀なのだろう。なんと可愛いんだろうと酔った頭でよく思ったものだ。 そうして奥では、我が女房はガーガーいびきを掻いて寝ているのだった。
   ●家族の一員
 家族が家のどこにいるか、ワンタはよく知っていた。いないとどこに行ったのか捜してウロウロすることがある。そしているのが分かると、近くに来てゴロンと横になったりしている。トイレにいるとドアの外で待っていたり、風呂に入っていると外で寝そべって待っていることも多い。ワンタは、家族の皆んなが大好きだった。その分、皆んなもワンタを可愛がった。
              

     ●ドライブ
 ワンタは車に乗せてもらうのが大好きだった。乗せてもらうと必ず、助手席の窓から身をのり出して、飛んでいく景色を眺めていた。気がのって来るとますます身を前に出していく。嬉しいのかシッポを大きく振っている。気候のいい時は窓を開けてやってもいいのだけど、寒い冬の時は閉口する。ヒータかけても震えて運転することもある。同乗者も寒い風を受けて震えている。こんな時、つい言ってしまう言葉があった。「そんなに車が好きなら、今度は人間になって生まれてくればいいのに。そうすれば、好きな車を自由に乗れるのに。でも、暴走族みたいに突っ張るかもね」こんな話しをしている間もワンタは思いっきり風を受けてドライブに堪能しているのだった。
ワン太の思い出
おうちのあちこちにワンタの思い出が落ちています・・・
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   ●散歩
 散歩もよく行った。家族の皆んなが、外に出たがるワンタに付き合って出かけていった。若い時は、1時間もかけて遠出にも出た。年を取ってくるとあまり遠くには行かなくなった。その日の気分で行きたい所が違う。時々主導権をワンタに預けて好きに行かせてみた。帰り道で好きに歩かせるとちゃんと家まで帰ってくる。本当は道という道をよく知っているんだ。