営業の達人への道


営業の仕事とは受注から始まり、売上し、そして入金まで。基本を越えた手法・考え方が必須。

 応用編 25. 敗戦より学ぶ 2

25.敗戦より学ぶ 2  
 前回、敗戦に学ぶ 1について、多少、抽象的に記述した。経験の少ない人達にとっては、また゛受け取る器が心にないこともあって、ピンと来ないこともあるだろう。今回は、前回の具体的な実例だ。
 この物件は、昨年の夏ぐらいから追いかけていた物件で、H県東部のある総合大学。当初、Webがらみのアプリケーションシステム商品で食い込んだが、話が進むうちに
教務システムから始まり、3年先のシステム再構築までのシステム構想話に発展する。トータル金額2億円レベル。実は、この大学には、当然、Fというシステム導入先メーカがいて、そことの2社競合となる。3ヵ年構想ということで、今回は教務システムに限定され、金額は少な目となったが、それでも今回受注できれば、次年度に繋げられる大きなチャンスを掴む事になる。そこで、営業戦略を立て、人脈より地元でその大学との取引を持つ企業やメーカNとのコラボーレーション体制を張った。確かに、地元企業は内部に食い込んでいるだけあって、刻々と情報が入る。システム内容は互角。操作性はこちらが優性。担当者レベルでの評価も丸。金額も相手の金額よりも努力×努力。そうして、何回かの学内協議あと、業者決定は、理事長預かりとなった。まさに、トップセールス領域である。 ここで、問題が露呈する。相手が、アンフェアな見積差し替え。大学側の検討期間の引き延ばし。情報の途切れ。ここまで見えてくると、大体、達人なら、この勝負危うしとして、つぎの手を打つものだが、前線の社長は、全く動かず。ただ状況打診のみ。メーカNの部長は「後は誠意のみ」とのたまう。アイデァはひとつ出てはいたが、前線で却下される。この辺りで、コラボレーションの難しさを思い知ったがこちらも手出せず。世の中考えはいろいろあるんだ・・・。そんなこんなで3週間が経過。大学から呼ばれた時には、正当な理由のついたお断り状。金額も、もう1ランク落ちて、こちら金額以下。「当大学卒業生を20名も採用してもらって来ているから」が相手を決めた理由であった。最後の最後に出ていたアイデァ、これは、理事長には最も感動を与える手立てだったが、その価値を受け取れない器の違い、経験不足、度胸の欠落により、採用されなかったことが悔やまれる。
 地元企業の営業マンが最前線にいて動いたが、彼に、最後のベストを尽くすよう、社長を動かせとも話したが、応えは「私の手に負えません」だった。この一言を聞いて、大変失望するとともに、営業はギブアップですべてが終わると思ったもんだ。


応用編 26. 見積り金額

26.見積り金額  なんでもそうだが、本気でコトに当れば物事はよく見えてくるものだ。見積金額についても同じ。見極めれば、数字は語ってくれる。 営業マンであれば、この見積金額というものは、避けて通れない受注への突破口だ。営業努力をし、やっと見積提出となるまでなんと時間のかかることか。その最終ラウンド、見積提出の時期を迎え、さて、いくらで出すか、競合する相手はいかほどで金額を出してくるかの情報が受注の大きなポイントとなる。
 当然、前もって会社内部で工数見積をし、取ろうと思えば詰めに詰め、そうして積み上がった金額。この金額で果たして受注できるか。どんな営業マンでも必ず一度はここで立ち止まることとなるのだ。内部で積み上げた金額、この数字も社内営業の努力・成果で変わってくる。また、担当するSE(技術者)の度量によっても変ってくる。そうして、本当に会社として取りたいということになれば、必ず出てくる上司の言葉といえば、「いくらなら取れるのか」だ。つまり戦略価格を見積金額にするということだ。ここで担当営業マンの意思が大きく反映されれば後もうまく行く。営業の断片しか見えていない者にこの価格判断は出来ない。もし、横槍が入れば必ず失敗する。 
 以前、H県は東部の地方自治体M町の住民記録総合情報システムの受注に際し、こういうことがあった。 大詰めを迎えて3社の金額提示となった時,競合するHは汎用機でないと提示して来れないから一億円を切ることは出来ない。Fはオフコンのシステムを持っているからまともにぶっつかって来る。内部積上げ金額は当然一億を越える。絶対に取る。しかし、だからといって競合に差をつけてまで取れない。どうするか。 こういう時に、もっとも提示金額が見えているのは担当営業マンだけだ。Fは一億を切って97,000千円レベルか。従って当方は96,000千円レベルで提示ということになった。この時の金額は、後で判ったことだが的中確率度98.9%でまさに神業の決定であったと思う。受注後、町のトップから余りに金額がFと接近しているので、もう少し差をつけて金額を落してもらいたいとのお達しがあって、これに応じた。今でもハッキリと覚えているが、上司にいくらにするかと聞かれ、バシッと金額が言いきれたのは、やはり、苦労して営業を行い、競合の動き、見込み客である地方自治体・町の財政からはたまた担当窓口までのすべての情報を全身で受け留め、何度も咀嚼し出てきた成果でしかない。本気になれば、それまでのすべての受け留めた情報をもとに金額が見えて来るのだ。
 その後見積金額提示に際し、よく部下に一言こう言ったもんだ。「見極めれば、必ず取れるその数字が浮かび上がって来て教えてくれる」と。
 見積金額に巡る不思議で、我ながら天晴れと思うような金額提示で受注をしたことがいくつかある。なかには的中確率度99.3というのも在った。 これらのご紹介はまたの機会に。

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